「あいちウェブ文学館」館長よりごあいさつ

●館長・三田村博史● 〜あいちの文学状況を発信〜
愛知は古くは万葉集に何首も「あゆち」と詠われ、県花・かきつばたは伊勢物語の東下りの段に由来するといった文学ゆかりの多い土地柄である。
明治に入っても坪内逍遥、二葉亭四迷といずれも尾張藩士の子弟が日本近代文学の礎を築き、つづいて半田出身の小栗風葉らが明治文壇を支えた。また日本における探偵小説の開拓者は蟹江出身の小酒井不木、名古屋の中心で育った江戸川乱歩。モダニズム詩運動を起こしたのも春山行夫らによってだった。戦後文学は旧制八高出身の藤枝静男、平野謙、本多秋五、さらには終生、渥美に根をおろし活動した杉浦明平に依るところが大きく、児童文学では新美南吉、さらには経済小説の城山三郎をも忘れることはできない。
この「あいちウェブ文学館」はその他多くの文人たちの資料を保存しようと活動した愛知近代文学館建設促進委員会(代表:故・助川徳是 名古屋大学名誉教授)への寄金によって、過去および現在の愛知の文学状況を発信する目的で開設された。今、刻々と失われつつある文学紙媒体を保存収納、後の世代につたえる文学館が出来るきっかけになればと願っている。
館長・ウェブ便り 〜ここでは館長・三田村博史氏の関連行事をご紹介します〜
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〇2月に「文化のみち二葉館」へ岡山の永瀬清子展示室の白根直子さんを招き「現代詩の母・永瀬清子と現代詩の長女・茨木のり子」と題し熊谷誠人さんと鼎談の形で話し合いました。その永瀬の詩は手にとって読める機会が少なかったのですが、ついに出ました。『谷川俊太郎選 永瀬清子詩集』(岩波文庫 1050円+税))。「妻であり母であり勤め人であり・・詩人であった」永瀬の詩だけではなく短章、谷川さんとの対談、そして白根さんの「研究ノート」まで載ってる編集です。ぜひ手に取ってお読みください。
なお永瀬が愛知県立第一高等女学校(現・明和高)の校友会誌「かゝみ」に発表した作文と地元詩誌「新生」などに載せた詩2編を『愛知県史』「資料編35 文化 近代12」に収録しました。永瀬は第一高女の専攻科にあたる高等科英語部で3年学び、名古屋で詩に目覚めています。
〇「文化のみち二葉館」といえば、「あいち文学フォーラム」代表の山下達治さん、上中満喜さんが連城三紀彦の甥・水田公師さんを招いてのトークイベントは10月15日盛会のうち終わりましたが、「没後10年 連城三紀彦展-花・幻・謎-」は11月30日まで開催しています。そういえば展示開始前の9月23日はあの元気いっぱいの活動家、前代表の市川斐子さんの一周忌でした。後を山下さん、上中さんが継いで活躍してくださいます。今後も地元文学を大事にし読書会など開いている「フォーラム」の行事にご支援ください。
〇先回案内した「北斗」700号記念会。予定通り終了しました。特に尾形明子さんの話が面白かった。長谷川時雨・主宰の『女人芸術』の会が名古屋・本重町にあった新守座で開かれ、在名の矢田津世子が世話をし短い講演をしたのは知ってましたが、当日の写真が提示され驚きました。
津世子は兄・不二郎が後の大和生命保険名古屋支社勤務になったのに付いてきて、兄と共に地元の「第一文学」に関わり、津世子は名古屋新聞(中日新聞の前身)にたびたびエッセイを書き、プロレタリア系の短編小説をも書いています。先に紹介した『愛知県史』には組合からの手紙を愛人からと疑った夫と別れる決意をする女を書いた「訣別」を収録しました。津世子はのちに「神楽坂」で女性として初めて芥川賞候補になっています。
不二郎が勤めていた大和生命のモダンなビルは先年取り壊されましたが、跡に「大和生命ビル」の上部装飾が残されています。兄妹だけでなく永瀬も連城も当然、広小路を歩いてますね。なお、『県史』には戦時中統合された同人誌「日本文学者」(1944年9月)発表の木全圓壽「霜」の一部も収録しました。木全は「北斗」の初代主宰です。
「あいちウェブ文学館」主催・協力事業
(作者・講師:三田村博史 館長)/長円寺会館
●2016年2月14日(日)『口語短歌の新たな地平ー歌集『砂丘律』批評会』/長円寺会館
●2013年10月5日(土)『漂い果てつ』を話す会/今池ガスビル7F ☆写真付レポートはこちら
●2015年5月31日(日)あいちウェブ文学館 お礼と報告の会/名駅アートハウスあいち
☆写真付レポートはこちら

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●掲載お申込み人はいずれかといたします。 1.著者ご本人 2.著者が掲載依頼をした、その代理人(著者依頼の確認できるものを準備ください) 3.著者が掲載依頼をした、その所属組織・団体(著者依頼の確認できるものを準備ください)
〒453-0013 名古屋市中村区亀島1-9-10 あいちウェブ文学館事務局 宛
掲載料金について
掲載料を専用振込口座「あいちウェブ文学館 00840-6-198845」(ゆうちょ銀行)へお振込願います。確認後よりウェブ掲載作業に入ります。
掲載費用は●1作品・3ヵ月・1,000円、6ヵ月・2,000円(同作品)。3ヵ月もしくは6ヵ月経過時点でウェブサイト上から削除いたします。事務局よりご連絡は差し上げませんのでご了承ください。お振込いただいた費用は、文学紙媒体を保存収納、後の世代につたえる文学館建設啓発活動(「あいちウェブ文学館」運営を含む)への寄付とさせていただきます。
掲載基準について
主に新刊紹介ですが、当面は既存のご著書でも可能です。
文学団体・研究組織を問いませんが、著者または団体があいちに在籍、関連がある、または著書の内容があいち文学にまつわるものとします。